【山奥ニートまとめ情報 – 後半】特集!

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「山奥ニートってなんか良さそう、もっとリアルな情報を知りたい。」

山奥ニートとは?

「山奥ニート」とは、和歌山県の限界集落で半共同生活を行う人たちの集まり。収入源はブログや地域のお爺さんお婆さんのお手伝いをしてお小遣い稼ぎ、生活費用を最低限に抑えた生活をしている。その中に普段の私たちの生活にはない豊かさを感じられる生活。著書『「山奥ニート」やっています。』の著者、石井あらた氏についてのお話です。

はじめに「山奥ニート」という言葉を聞いたことのない人はこちらから読んでみてください!山奥ニートについて



この記事を読んでわかること

  • 山奥ニートの日常、ワンシーンが記載されています
  • 前半、後半の2記事で内容がわかるようにまとめてあります

記事の目次

  1. 山奥ニートまとめ情報⑦【山奥ニートが年収30万円でも貧乏だと感じない理由】
  2. 山奥ニートまとめ情報⑧【ネットさえあれば、限界集落でもひきこもれる】
  3. 山奥ニートまとめ情報⑨【見学者が200人を超えた】
  4. 山奥ニートまとめ情報⑩【怪我や災害を不安に思う人へ】
  5. 山奥ニートまとめ情報⑪【人間関係に行き詰まらないワケ】
  6. 山奥ニートまとめ情報⑫【山奥って便利だ】

山奥ニートまとめ情報⑦【山奥ニートが年収30万円でも貧乏だと感じない理由】

貧乏だとは感じない理由

僕の年収は少ないです。年収にしたら30万円程じゃないかな。だけど貧乏だと感じたことは無い。それは山奥に「無料の食べ物」があるからだ。ここに引っ越してきた時に広い敷地を自由に使って良いと言われたが、いま畑として使っているのはほんの一部。本当はもっと開拓して、農業としての収入を得るべきなんだけど、誰もやろうとしない。何人かが挑戦してみたようだが、すぐやめてしまった。ニートに本格的な農業は厳しい。とは言え、家庭菜園レベルなら難しいことじゃない。農作業をやるときはスピーカーを設置して、みんなの好きな歌を流す。喉が渇くと、畑の脇に植わっている夏みかんをもぎとって、果汁をちゅうちゅう吸う。山奥でひとりで暮らすほどのたくましさは、僕にはない。もしひとりで畑作業をやるなら、僕は山奥に住むのを諦めていた。ただのニートが山奥に暮らせているのは、仲間がいるからだ。

基本的に畑の雑草は伸び放題、殺虫剤も撒かない、ほとんど水もやりもしない。それでも夏には真っ赤なトマト、ツヤのあるナスができる。自然農法っていうのに近いかもしれない。何年もやっていると分かることがある。こういう適当なやり方でうまくいくのは、トマト、きゅうり、ナス、ピーマン、ししとう、唐辛子の仲間だけ。一番良いのは、じゃがいも。雑に作っても、掘りだせばどっさり芋が採れる。
山なかで農作物を作る時の問題は獣害。シカやイノシシが僕らの畑を狙っている。柵で囲われていない畑はシカやイノシシのとって最高の食堂だ。悔しいけど何度も被害にあっている。
本来、野菜を作るために必要なお金なんて、種代と肥料代だけのはずなのに、柵の材料費を加えると、とたんに経費が膨れ上がる。僕らは村の人から使わなくなった柵をもらったり、廃材を組み合わせたりして工夫しているけど、やっぱり防御力は落ちる。まあでも、これだけ近くまでシカやイノシシがやってくるのは、考えようによっちゃチャンスでもある。だって無料で食べられる肉が、そのへんを歩いているのだ。

山奥ニートの何人かは、罠の狩猟免許を取った。若い集落は減っており、村の人にも喜ばれる。シカは集落共通の敵だ。罠の狩猟免許は案外簡単に取れるらしく、うちの住人は一夜漬けで合格していた。曰く、原付きの免許と同じくらいの難しさ、らしい。
シカやイノシシが人里に現れるようになった理由はいろいろな説があるけど、一番よく言われるのは「植林された杉だらけで、実をつける広葉樹が減って食べ物を求めて人里に来るようになった」というものだ。集落のひともよく言っている。昔はもっと山から山菜やきのこが採れたし、今の山は貧しくなった。杉が垂直に立ち並ぶ山は、どう見ても自然物には見えない。山には今ではあまり食べられなくなった植物がたくさんある。僕が好きなのは、ユキノシタ。薄く衣をつけて、カリッと揚げて天ぷらにする。葉っぱなのにモチモチとした食感をしている。本当にお金に困ったら、なんだって食べるけど、今はまだいいかな。秋になれば昔からある栗や柿、柚子がたくさん実る。しかし今じゃ摂る人もいなく、猿がやってきて全部食べてしまう。猿が食べるなら我々ニートがありがたく食べさせてもらおう。感謝感謝。
この集落には、自然薯堀りの名人がいた。でも少し前に亡くなってしまった。この集落は年々人が減っていく。技術が毎年、失われていく。昔、自然薯や松茸が採れる場所は誰も教えてくれなかったそうだ。でも、今はみんな教えてくれる。高齢になった集落の人が採りに行くのはしんどいし、たくさん採っても自分だけじゃ食べ切れない。あと10年したら忘れ去られてしまう。人が少なくなった今だからこそ、山に美味しい話が転がっている。それを集めたら、21世紀の今だからこそできる狩猟採集があるかもしれない。

「山奥ニート」のリアル#7 山奥ニートが年収30万円でも貧乏だと感じない理由|本がすき。

山奥ニートまとめ情報⑧【ネットさえあれば、限界集落でもひきこもれる】

坂口恭平という人が著書『ゼロから始める都市型狩猟採集生活』で、森に自然の恵みがあるように、都市には都市の恵みがある、と言った。それに倣えば、僕らも自然の恵みの他に、都市の恵み、、、いやもう少し広く、文明の恵みと呼ぶべきものを受け取っている。文明がもたらすものは、大なり小なりお金を支払わなければ受け取ることができない、と思われている。でも、中にはそうじゃない、稲穂に米が実るような、そんな恵みもある。例えば、山奥ニートの元にはよく支援物資が届く。インターネットは世界の距離を大きく縮めた。僕はブログを書いたり、ユーチューブで配信したりして山奥の出来事を、全世界に発信している。ニートが山奥に集まって生活していることに面白さを感じてくれる人が応援してくれている。今まで色々なものが送られてきた。スパゲティ、DVDとそのプレイヤー、ボードゲーム、ウインナー、電気ケトル、布団と毛布など書ききれない。支援物資には僕が欲しいといったものが送られてきたり、家に眠っていたものが送られてきたりする。

この現代社会、ものがすでに余っている。例えば、寝袋やテント、キャンプ用品。それを山奥に集めたら何人が生活できるのだろう。服だって、一生買わなくてもいいんじゃないかと思っている。今この瞬間も新しい商品が作られている。その分、古くなったものは捨てられる。最新のゲームが送られてくることはないけど、古いゲームが送られてくる事はある。ゲームも古いもので充分だ。最新のゲームは、映像も綺麗だったりするが、最新のゲームを遊ぶ価値は、その楽しさを共有する相手が多いことにある。集まって住んでいれば、昔のゲームでも楽しさを共有できる。
自然の恵みも、文明の恵みも、不作なことがある。恵みだけに依存してはいけない。恵みを受け取れるかは天の思し召し次第だ。大昔、人々が神に祈って雨を待つしかなかったように、僕もブログを更新して”神”が現れるのを待つ。恵まれないときは、そのときだ。というか、得られないのが当たり前だから恵みなのだ。だからそれを得られてときに感謝を忘れてはいけない。自然に感謝。文明に感謝。本日も生存させていただき、ありがとうございます。どうか次も恵みをください。そのために、今日も祈りを捧げます。

「山奥ニート」のリアル#8 ネットさえあれば、限界集落でもひきこもれる|本がすき。

山奥ニートまとめ情報⑨【見学者が200人を超えた】

田舎にいると、新しい人と出会う機会が少なくなる。同じメンバーだと排他的にもなるし、序列が固定化されるし、しきたりを破った者は制裁されるようになる。僕らの山奥では、それを回避するために、外からの見学者を受け付けている。見学者は施設利用料を払えば、2週間まで滞在できる。旅館じゃないから身の回りのことは自分でやってもらう。その代わり料金は最低限で儲けない。今まで200人くらいが山奥に見学しに来ている。単に興味本位でくる人、住むための下見に来る人、シェアハウスを作る参考に来る人、休職中の癒やしを求めてくる人など。外からやって来る人は有り難いことに全国各地の銘菓を持ってきてくれる。お酒を持ってく来てくれる人もいる。お盆などの連休は毎日酒盛りだ。

都市にいたら絶対にあわなかった人にも山奥にいることで会えた。沖縄でゲストハウスを経営している人、ここを取材したいという映像作家、M-1出場者、億万長者、自称魔女。外から来た人が多い日はここが山奥だとは思えない。見学者同士が仲良くなることもある。ここに来る人は、ある程度下地に共通の価値観があるからきっと話しやすいんだと思う。もし人と話したくない気分なら部屋から出なければいい。

テレビや雑誌に取り上げられると数カ月後にワッーと一斉に見学者が押し寄せる。ただのニートの家なんだけどな。
この場所をよくわかっていない人が来ると面倒くさい。以前ここをライダーハウスだと思って来たおじさんがいた。その日の晩ごはんはたこ焼きだったんだけど、「晩ごはんにたこ焼きなんて食えるか!」と怒って部屋から出てこなかったらしい。別にいいと思うんだけどな、晩ごはんにたこ焼き。ここまでひどい人は他にない。
この場所はとんでもなく不便な場所にあるから、生半可な覚悟じゃ辿り着けない。ここに来るほとんどの人は、しっかり調べて来てくれる。それでも、最近はあまりにも人が来すぎて疲れてしまうから、毎月1〜15日だけの見学者を受け入れて、残りは見学者を断ることにした。だから月の半分は静かな山奥だ。自分は一歩も動いていないのに、喧騒と安静を繰り返している。単調になりがちな山奥暮らしの。良いスパイスだ。

「山奥ニート」のリアル#9 見学者が200人を超えた|本がすき。

山奥ニートまとめ情報⑩【怪我や災害を不安に思う人へ】

僕らが住んでいる紀伊半島はちょうど台風の通り道になる。僕はちょうどそのとき、旅に出ていて山奥にはいなかったんだけど、聞くところによると大きな被害を受けたらしい。倒木が取り除かれる4日間までの間、ここは陸の孤島と化した。交通だけでなく、電気も水道も止まった。「それってめちゃくちゃ大変だったんじゃないの」と聞いたら、みんなは「大変だったけど楽しかった」と答えた。お風呂や洗濯ができないから、川に入って水遊びをしながら服を洗ったらしい。電気がなくてゲームもできないからボードゲームでずっと遊んでいたそうだ。
僕自身、これだけの人数がいれば、だいたいのことはなんとかなる気がしている。ここに住んできた人は、昔からなんとかしてきたのだ。

都会が災害を受けたときの報道を見ていると、帰宅難民が出たり、商品の買い占めがあったりとかえって山奥より大変そうに見える。洗濯を手で洗ったり、焚き火を起こして料理をすることは本来当たり前のことなんだ。でも、文明のおかげで普段やらずに済んでいるだけ。
大雨や地震によって土砂が崩れたら、僕の家はまるごと埋もれてしまうだろう。でも、それはしょうがないことだと思っている。生きていりゃ死ぬこともあるだろうし、世の中死ぬ原因は無数にある。僕はいろいろな保険をかけて長生きするよりも、若くして死んでも悔いが残らないようにやりたいことをやる生き方をしたい。

しかし怪我や病気は頻繁に起きている。ここに住んで住人が重い怪我や病気になったことは今まで3回ある。家に変える途中バイクで転んで骨折した人、採った魚を食べてお腹を壊して入院した人、謎の虫に足を刺されて野球ボールくらいの水ぶくれができて救急車を呼んだ人。どれも皆で協力して車で病院まで送ったりしてなんとかなった。診療所は車で30分いったところにある。そもそも周りに住んでいる人は高齢者ばかりで僕らよりずっと病院を利用する。山奥に住んでいると皆が僕が将来病気になったときのことを心配する。だけど働くことで病気になるリスクを増やして、病気に備えるのは本末転倒だ。田舎に住んでいる高齢者は認知症になりにくいという。日々生活するために自分の手と頭を動かさないといけないからだ。

街にいると自分の役割がなく、人の役に立つどころか迷惑をかけているのではないかと感じてしまうそうだ。このあたりの爺さん婆さんはみんな元気で格好いい。簡単に人を頼ったりしない。自分ひとりで大概のことをやってしまう。僕もあんな風になれたらいいなと思う。これから先の50年、何があるなんて誰にもわからない。年金制度が破綻するかもしれないし、円が暴落するかもしれない。
一番いい備えは、怪我や病気をしたときのために貯金することじゃなく、自分ができることを増やしておくことなんじゃないだろうか。ここに住んでいると、どうもそう思えてならない。

「山奥ニート」のリアル#10 怪我や災害を不安に思う人へ|本がすき。



山奥ニートまとめ情報⑪【人間関係に行き詰まらないワケ】

山奥ニートはおおむね仲がいい。喧嘩をすることは滅多にないし、そもそも嫌なら無理に関わることもない。あらゆることが自分のペースでできるし、皆が作ったごはんは美味しいし、持ち寄った漫画やゲームがたくさんあって遊び尽くせないほどだ。それでも山を去っていく人はいる。ここに不満を感じて去っていくというよりは、就職が決まったり、家族の事情で実家に帰ったりすることがほとんどだ。だけど、こちらから出ていってくれと言ったこともある。そこまで言うのは2つのパターンだ。1つ目は、生活費が払えなくなったパターン。共益費と食費を何ヶ月も滞納して払える見込みがなかったので出ていってもらった。山奥ニートの生活費は月に1万8000円と安い生活費を払えないのは、お金がないのではなく、支払いに対する優先順位が低いんだと思う。お金がないという人ほど、趣味のものにお金を使っていたりする。もう1つは暴力を振るうパターン。結局のところ、今の山奥ニートの間で判断するのは、僕を始めとした古参3人による独裁政治になっている。シェアハウスは独裁制がいいと思う。少人数の民主主義は最悪だ、その場の雰囲気で物事が決まってしまうからだ。

今はもう、僕と気が合う人だけ集まればいいと思っている。多様性だの、グローバル化だの言われてるけど、たくさんの種類の生き物を飼うには、小さな水槽をいくつも用意するのが一番だ。大きい水槽1つだったら、大きな生き物が小さな生き物を全部食べてしまう。僕らのような小さくて弱い生き物が生き残るには、自分と同じ種類の生き物同士で集まるのが一番いい。僕らはニートで、嫌な人と無理に付き合う必要がないから、こんなことが言えるのだ。

そういえば、シェアハウスの運営の大先輩である、ギークハウス発起人のphaさんに聞いてみたことがある。シェアハウスで起きたトラブルはどう対処しているんですか、って。帰ってきた答えは「まあ、殺し合いにならないなら、放っておけばいいんじゃない」
うーん、ここまで達観できるのはすごい。僕もあと10年続けたら、そんな境地に達するんだろうか、、、、。

「山奥ニート」のリアル#11 人間関係に行き詰まらないワケ|本がすき。

山奥ニートまとめ情報⑫【山奥って便利だ】

山奥って便利だ。ここは無料でできる遊びがたくさんある。川で釣りをしたり水遊びをしたり、森に入って散歩したり、庭でバーベキューしたりと思いつけば今すぐ無料でできることが多い。都会だったら、どんな遊びでも1日何千年も必要になる。信じられないことに、都会では座って休むだけにもお金がかかる。喉が渇くたびに自販機やコンビニで水を買わなきゃいけない。山奥では蛇口をひねれば清水が流れる。真夏でも冷たくって僕は他のどんな飲み物よりも好きだ。それだけじゃない。例えば、みかんを食べ終わって皮を捨てるとき、森の方へ放り投げればそれでおしまいだ。
山奥に集まって住むと、山奥の「必ず自炊しなければいけない」だとか「刺激がなくて退屈」だとかのデメリットが打ち消される。ひとりだったら山奥は不便で暮らしていけなかったかもしれない。僕が5年も山奥にいられたのは、一緒に住んでくれる人がいたからだ。

そもそも不便は悪いことだろうか。「不便益」という言葉がある。不便だからこそ、良いことがあるという考え方だ。介護の世界では「バリアアリー」という言葉があるそうだ。バリアフリーじゃない、バリアアリー。バリア、有り。バリアアリーのデイサービス施設には、わざと長い階段や段差を設けられている。スロープやエスカレーターをいつも使っていたら足の筋肉が弱ってしまう。 何の苦労もなく生活していたら、ボケだって進行していくだろう。わざと不便さを残すことで、お年寄りが自分の力で生活できるように訓練している。

僕の住んでいる共生舎は住所を公開している。遊びに来たければどうぞ、とも言っている。普通インターネットに公開したらへんなやつが来るが、まだ来てない。僕が思うに、その理由は山奥だからだ。始めてくるほとんどの人は口を揃えて「想像以上に山奥でした」と言う。山の中では携帯電話だって繋がらないんだ。だからしっかしとした事前情報なしにはここには辿り着けない。僕らはこの山に守られている。これも不便益だろう。

この集落には、未だに薪を割ってお風呂を沸かしている人だっている。年金もらえるんだから、もっと便利な町に移り住めばいいのに。でもそうしない。山奥が好きなんだって。逆も言える。苦労しないことが幸せじゃない。ニートは親の金で飯を食えて羨ましいと言う人がいるけど、そんなことはない。多くのニートは焦りとプレッシャーの中で戦っている。経験者の僕が言うんだから間違いない。便利なことと、幸せなことは直接結びつかないんだ。まったく関係ないわけじゃない。技術が進歩して便利になったおかげで幸せになったことはたくさんある。でも、たまには不便なほうが良いことがある。

「山奥ニート」のリアル#12 山奥って便利だ|本がすき。

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